高畠ゼミOB・OG会

「原発勉強会」の報告です
期日/ 2011年 5月14日(土)午後4時30分〜6時30分
  ・場所/ 銀座ルノアール マイ・スペース池袋西武横店(ぬかりやビル2F)
    
  講師/ 立教大学理学部元教授 佐々木研一

テーマ/ 
  3月11日の「東日本大震災」に伴う
     「福島第一原子力発電所の事故」について
                          
(レジメあり)  レジメ>>◎

・ 主催/ 高畠ゼミOBOG会

佐々木先生からは、原子力発電の基礎知識と危険性と、今回の事故と今後の原子力発電の課題についてお話しいただきました。
参加者は25人。講演のあと15人ほどで佐々木先生を囲込む2次会へ。

5月28日の佐高信氏のミニサロン「原発事故のこれからの日本」にもぜひお越しください。午後3時〜5時 会場は同じ

以下は佐々木先生が用意してこられた、講演の要旨でもある「福島に想いを寄せ」の一文です。なお、添付ファイルの当日配られた講演の改定版レジメも大変わかりやすく、役立ちます。ご参照ください。

「福島に想いを寄せ」
・原発事故の意味を考え,各自が今後を決めるには,住む土地を事故で追われた人々の立場で考えるとよい。
・現地を訪れた菅首相に対し,「内閣の人たちを連れてきてここで生活してみてください。どんな思いしているか・・・」という女性の叫びが心に残る(4/22)
・福島に住んでなくてよかったと内心思い,現地を尻目に買いだめをした人は,他人事のように,今後も原発を遠くへ押しやり,容認して行くつもりか?
・福島の現状を見るにつけ,原発に依存してきたことの罪深さを感じないわけにはいかない。
・千を超える校庭で自由に遊べなくなった子どもたちを尻目に,被曝線量の上限の線引きに科学的根拠が見出せず右往左往する大人たち
・ひと度原発に事あればどうなるか,わかっていたではないか
・スリーマイルとチェルノブイリで何が起きたか
・絶対安全な技術などあるはずがない
・神話を唱えた方も愚かだが,信じた方はさらに愚か

・この事故の加害者は東電や原発の許認可を下した専門家と政治家のみならず私たち東電の受益者ではないか
(福島は東電の電気の恩恵を受けていない)
・私たちは立地が福島だったから強く反対しなかったのではないか
・東京に作るといわれたらどうだったか
・心のどこかで被害候補地を福島へ遠ざけなかったか
・私たちは未必の故意の加害者ではないか
・被害の保障を加害者が負担するひとつの方法は電力料金に負担金を上乗せして徴収すること
・電気料金は2倍でも3倍でも,福島を思えば高くない
・国にも責任? 国も負担? でも国税は誰のもの? 福島も負担? 国って何?
・国税投入は加害者意識を隠蔽
・夏のクーラーより先祖からの土地と家を返してほしい人たちが福島にいる

原発の現場作業員を思う
・高放射線量の場所で線量計も不足がちの危険な環境で修復作業に従事
・この事故の収束は彼らにかかる
・この環境下で要員を確保できているのが不思議
・指揮を取るトップは東京で?
・指揮系統が透明でないなか,振り回される作業員

放射線被ばくについて

・放射線の影響は低い被ばく量では確率的であり,被ばくするほどリスクが高まるというのが国際放射線防護委員会の安全サイドに立つ考え方
・どんなに小さな被ばくでもリスクはあるという姿勢
・発病にはしきい値があるという専門家も居り,意見が割れる
・低線量被曝は健康によいという人もいるが学会は認めず
・現実問題として,リスクが小さい場合,他のリスクと重なり区別できなくなるが必ず被害は増える
・宝くじと同様,どんなに低い確率でも,大勢が買えば必ず誰かが当たる
・逆に,買わなければ絶対に当たらない

・放射線は“貧乏くじ”だが
・誰も買わない方がいいに決まっている
・高確率の例だが,次図のように,年間許容線量1ミリシーベルトの1000倍(1000ミリシーベルト)を一度に被ばくした場合の発がんリスク(全固形がん)は1.6倍(60%増し)となり喫煙リスクはとほぼ同じという  (祖父江友孝,がん対策情報センター:
http://www.ncc.go.jp/jp/information/pdf/shiryo3.pdf,
放射線影響情報は「原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR),1993報告」による)
・上記URLではさらに,白血病のリスクは4.4倍(20歳未満では6.1倍)という
・上記の1/100にあたる10ミリシーベルトの被ばくでは全固形がんリスクは1.006倍(0.6%増し,発がん1000人のところが1006人に増える)である
・喫煙リスクの1.6倍よりはるかに低いとはいえ,本来存在しないはずの被害なら避けるべき
・食品・飲料水の放射能測定は1行政地区につき1試料の抜き取り検査しかしない無意味・非合理
・何もしないのと大差ない
・検査・分析の前処理(洗浄方法・時間等)に個人差
・恣意的な測定もないとはいえず,疑心暗鬼
・最後は信頼関係しかなく,放射性物質からは逃れようがないのが現実であれば,測定など一切しない方が幸せかもしれない(風評被害防止)
・結局,遠い先の放射線障害か,現在の栄養不足か,二者択一
・土壌汚染の評価法:国はBq/kg,IAEAはBq/u
・国のやり方では深掘りすれば濃度は低く報告可能


原発のない暮らし

・原発反対を唱えると,代わりはあるかと問われる
・風力や太陽光があるといえば,密度が低く原子力の代替とはならないという
・代案がなくても反対を唱えてよい場合がある
・制御しきれず,子孫までツケを残す技術は悪である
・原発ある限り事故はまた起きる
・自国の技術は大丈夫といってきてこの有様
・「津波」さえなければというが,それに代わる「想定外」は想定できないところで待ち受ける
・この反対に代案はいらない
・まず止めて,それで成り立つ経済と暮らしを考える
・原発なしにいまの暮らしを維持できないというのであれば,原発を遠くへ押しやり,電気だけ得るパターンをやめ,まず原発を自分の町に設置する
・さもなくば,いまの暮らしを最早維持しないという選択肢がある
・原発をなくし,再生可能エネルギーで暮らすには,ライフスタイルを根本から変えるしかない
・それができず,原発はやはり必要と主張する人は,福島の人にどの顔を向けるつもりか
・やはり,福島の人をさて置く発想はあり得ない
・福島の人が失った以上のものをこれから東電管内の私たちが失うことはない
・事故による汚染も,原発停止・放棄による停電・経済損失も,どれもこれも

その他
・映画「10万年後の安全」
・ロシアのノボジブコフは現在も毎時1ミリシーベルト
・1時間で1年分被ばく
・事故直後はその50倍もあった
・起こしてしまった事故に対し,福島の人をして「どうせなら,くよくよするより気楽に生きる方がよい」と言わしめる悲しさ
・「日本人の強さ」のもとは何か?
・プルトニウム238の意味:原子炉の燃料が漏れた
・この事故の行方を私たち旧世代は見届けることができない
・同心円の怪
・浜岡停止の「波紋」のニュースは,夏の電力,産業電力,原発雇用・・・などの先行きばかり
・一方,被災地の校庭被曝は年間10mSv超の学校は400校以上に上るが,線引きを20mSvに設定すれば10数校に減るという「政治」が浜岡とは別のニュースとして語られる
・浜岡停止は福島の延長上にはずなのにマスコミは脈絡が見えていない
・福島には,事故を片時も忘れられず,その延長上でしか考えられない人がいる
・最も長期にわたる問題は核廃棄物の最終処分場だが,モンゴルに頼むという案が語られる
・自分達の「排泄物」を他人に押し付ける気だ
・電気がほしいのであれば,廃棄物くらい自区内処理してはどうか
・処分地の第一候補は東京
・それがいやなら電気は使わないこと                   以上

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